環境省統計(2010年度・犬猫の引取り・県市別)

動物行政に関する全国的な統計データは、地球生物会議ALIVEさんによる資料集『全国動物行政アンケート結果報告書』が有名ですね。1997年度(平成9年度)から毎年アンケート調査を行なわれていて、2012年10月現在、2004年度(平成16年度)から2010年度(平成22年度)分については報告書をオンラインショップで購入できます。殺処分数に関するデータはしばしばあちこちで引用されますが、それ以外にも、行政からの譲渡方法に関する項目や、行政と動物愛護団体との連携、動物愛護関連業務の予算総額などといった、幅広い内容が含まれています。

しかし、本来行政が行なっている業務内容なのだから、その元締めである中央省庁のウェブサイトなどでも、公式の数字にアクセスできるようになっているのが当然といえば当然です。動物行政であれば環境省になりますが、同省が作成している「動物愛護管理行政事務提要」の2010年度版(平成22年度版)2011年度版(平成23年度版)が、それぞれ閲覧できるようになっています。2011年度版(平成23年度版)の目次&PDFリンクはこんな感じ。いろんなデータが詰まっていて、なかなかに興味深いものです。

1 動物愛護週間
  1. 動物愛護週間行事の実施状況
  2. 動物愛護管理功労者表彰受賞者 [PDF 209KB]
 
2 条例等の現況
  1. 動物愛護管理条例
  2. 犬・猫の引取り等の業務
  3. 闘犬等取締条例 [PDF 61KB]
  4. 猫の保護(愛護)及び管理に関する要綱等の概要 [PDF 170KB]
  5. ふん害等防止条例の概要 [PDF 356KB]
 
3 統計
  1. 動物取扱業者登録状況
  2. 特定動物の飼養許可状況 [PDF 96KB]
  3. 動物による事故
  4. 犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況
  5. 動物の保護及び管理に関する法律(旧法)及び動物の愛護及び管理に関する法律(平成12年12月施行)違反人員 [PDF 25KB]
  6. 犬の登録頭数等調査(全国計:昭和35年~平成22年度) [PDF 28KB]
 
4 参考資料
  1. 動物愛護推進員・協議会の設置状況 [PDF 190KB]
  2. 犬・猫の引取り等手数料及び不妊・去勢手術助成金 [PDF 210KB]
  3. 都道府県・政令指定都市・中核市動物愛護管理行政担当組織一覧 [PDF 138KB]

さて、久しぶりに長いマエフリになりましたが、今回ちょっと機会があったので、3-4-(2)の統計「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況(都道府県・政令市・中核市別)平成22年度/犬・猫の引取り」という長いタイトルの統計をまじまじと見てみました。要は、どこの県・市で、何匹犬や猫が持ち込まれ/収容され、何匹が譲渡され/返還され、何匹が殺処分されたか、という統計なのですが、お役所仕事というかなんというか、非常に見づらい表になっています(上のリンク先をクリックしてみて下さい)。

その最大の原因は、都道府県順にまず数値が載せられ、その次に政令指定都市がその指定日順に、さらに中核市がその指定日順に載せられているからです。長崎の例で言えば、1ページ目に長崎県の数字が出てきて、3ページ目に今度は長崎市の数字が出てきます。1ページ目の方は北から南への都道府県順ですが、3ページ目の方は、長崎市の上は和歌山市、下は大分市・豊田市・福山市・高知市……と続いて、なんの順番だかさっぱりわからない。「あれ? じゃあ最初の長崎県の数字の中に、長崎市の数字は含まれているの? いないの?」と思うのが、普通の神経です(答えは「含まれていない」)。また、「犬・猫の引取り」の続きには、よく似た項目で「負傷動物の収容」という同じく3ページにわたる統計が載っています。これは、保健所やセンターに入ってきた経路が、持ち込みや捕獲によるものではなく、負傷動物の通報に基づく収容による分です。「結局保健所やセンターに入ってくる分には同じなのだから、なんでわざわざ表を分けるの?」と思うのが、やっぱり自然な感覚だろうと思います。

この「動物愛護管理行政事務提要」という冊子は、行政職員が自分の机の傍らに置いてその都度参照するためのもの=お役人向け資料集なので、それでいいっちゃあいいのでしょうが、市民目線で見れば、この難解な区別&並び順だけでせっかくの資料もゴミです。

というわけで、この統計――どの県・市で、犬・猫が何匹収容・譲渡・返還・処分されたか――を都道府県単位に並べ直して Excel 2010 のデータにしたものをつくり Google Drive にアップしました(2010年度・犬猫の引取り・県市別・環境省まとめ)。どなたでもダウンロード可能ですし、ダウンロードした後は普通の Excel ファイルなので、加工も容易にできると思います。

2012-1003_env_statistics

(図をクリックするとプレビュー画面が開きます。ダウンロードはメニューから。)

表中灰色の網掛けとなっている部分は、たとえば引取り数などについて、幼齢個体を成熟個体と区別せず、一括して成熟個体に含めていることを示します。同様に、濃いオリーブ色の網掛け部分は、飼い主からの引取りと所有者不明の引取りを区別せず、一括してどちらかに含めてしまっていることを示します。

このように、実は各県・市によって、統計の取り方はまちまちだったりするので、単純に縦を合計して「全国で、収容された成犬は何頭、子犬は何頭、成ねこは何頭、子ねこは何頭……」と述べるにはデータの信頼性が足りません。「全国で1年間に処分された命は、何十何万何千何百何十何頭!」という表現も、どこまで元の集計業務に信頼が置けるかを考えると、けっこう微妙だったりします。千より下の位での細かさは、実はあまり意味はないんじゃないか、とさるねこ父は個人的には思います。引取・捕獲・負傷収容、すべての経路についての殺処分数を合算した数値は、環境省の数値とALIVEさんの数値を比べると、前者は214,819頭、後者は213,607頭(いずれも2010年度)と食い違いが出ることからも、それは明らかでしょう。

それよりは、経年比較や、各年でも比較可能な部分どうしの比較から、いろいろなことを読み取る方が生産的ではないか、とさるねこ父は考えています。以前、日本地図を都道府県ごとに色分けしながら「返還・譲渡率」について考えてみたりしましたが、今回作成した Excel データなども利用しながら、また何かネタを考えてみようと思います。

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