1/12のねこ会議でとらばさみの使用に関するご相談がありました。
長崎市内某所にて、内外飼いのねこが、おそらくとらばさみと思われる仕掛け罠にかかり、獣医師の方に診てもらっていろいろと手を尽くしたものの、片足を失ってしまったのだそうです。それが半年ほど前のできごと。その後、その近所で複数のねこが足を失う事例が続き、いろいろと調べていった結果、ほぼ罠を仕掛けている家は特定できたけれども、これからどうしたらよいだろうか、というご相談でした。
下で述べるように、とらばさみの使用は違法です。そこで、相談者の方には、最寄りの交番に相談に行っていただきました。さいわい、警察ではきちんと事件として取り扱っていただくことができ、今後同様の事件が起こらないように巡回を強化してもらうことになっています。また、自治会内でも問題として取り上げてもらうことなどを通じて、罠を仕掛けること自体をやめさせる方向でいろいろと対策を練っているところです。
似たようなことはどこでも起こりえると思いますので、考えられる対応策をまとめておきます。
- ケガをしたねこを獣医に診てもらい、傷の写真を撮っておくとともに、とらばさみの使用されたか又は使用が疑われる旨の診断書をもらっておく
- 写真・診断書を証拠として、最寄りの交番に相談する(→動きが鈍いようなら、都道府県の鳥獣保護員に相談を。都道府県の自然環境・自然保護関係の部局に尋ねるとよいです。)
- 環境省作成のチラシなどを使って、とらばさみの使用が違法である旨周知してもらえるよう、自治会等に働きかけを行なう(おそらくその際には、ねこの室内飼いを合わせて周知するようにした方がよいだろうと思います)
- 同じく環境省作成のチラシやALIVEさん作成のチラシなどを使って、近隣のホームセンターなどでとらばさみを販売しないよう働きかけを行なう
とらばさみについては、「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律施行規則(鳥獣保護法施行規則)」(平成14年環境省令第28号)の2007年1月改正(平成19年環境省令第3号)によって、狩猟(法定猟法)における使用が禁じられています。
「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護法)」では、「鳥獣=鳥類又は哺乳類に属する野生生物」を対象として(鳥獣保護法第2条第1項)、環境省令(=鳥獣保護法施行規則)によって定める道具を使って(同第2条第2項)、「その肉又は毛皮を利用する目的、生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害を防止する目的その他の目的で捕獲又は殺傷の対象となる鳥獣を捕獲又は殺傷すること」(同第2条第3項)について規制を加えています。かなりわかりにくい表現ですが「ある特定の動物を」「ある特定の方法で」「ある特定の目的のために」捕獲・殺傷することを「狩猟」と定義し、それに一定の制限を加える、というのが鳥獣保護法の目的の一つです。「狩猟」には、いわゆる狩猟免許が必要です。
もともととらばさみは、狩猟に使える道具として、くくりわな・はこわな・はこおとし・囲いわなとともに、鳥獣保護法施行規則第2条第3号に掲げられていましたが、2007年1月改正によって削られました。つまり「法定猟法」の範疇外となったわけです。狩猟免許を持っていても「狩猟」の目的でとらばさみは使えません。
「狩猟」とは異なるタイプの野生生物の捕獲としては「許可捕獲」があります(鳥獣保護法第9条)。
鳥獣保護法第9条
学術研究の目的、鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害の防止の目的、第七条第二項第五号に掲げる特定鳥獣の数の調整の目的その他環境省令で定める目的で鳥獣の捕獲等又は鳥類の卵の採取等をしようとする者は、次に掲げる場合にあっては環境大臣の、それ以外の場合にあっては都道府県知事の許可を受けなければならない。
一 第二十八条第一項の規定により環境大臣が指定する鳥獣保護区の区域内において鳥獣の捕獲等又は鳥類の卵の採取等をするとき。
二 希少鳥獣の捕獲等又は希少鳥獣のうちの鳥類の卵の採取等をするとき。
三 その構造、材質及び使用の方法を勘案して鳥獣の保護に重大な支障があるものとして環境省令で定める網又はわなを使用して鳥獣の捕獲等をするとき。
農業に被害が出ているとか、生態系に影響が出ているといった場合に、環境省または都道府県の許可を得て行なうのが「許可捕獲」です。対象となるのは鳥獣(=野生の鳥類・哺乳類)全般で、危険猟法(他人の生命または身体に重大な危害を及ぼすおそれがあるわなを使用する猟法:鳥獣保護法施行規則第36条)でなければ方法も問われませんが、当然ながら「許可」が大前提になります。
さらに「狩猟」とも「許可捕獲」とも異なる特定の次のケースについては、狩猟免許を持たなくても、環境省や都道府県の許可を得なくても、捕獲・殺傷が認められています。
鳥獣保護法第13条
農業又は林業の事業活動に伴い捕獲等又は採取等をすることがやむを得ない鳥獣若しくは鳥類の卵であって環境省令で定めるものは、第九条第一項の規定にかかわらず、環境大臣又は都道府県知事の許可を受けないで、環境省令で定めるところにより、捕獲等又は採取等をすることができる。鳥獣保護法施行規則第12条
法第十三条第一項の環境省令で定める鳥獣又は鳥類の卵は、次の表に掲げる鳥獣とする。
[表様式略]哺乳綱もぐら目もぐら科全種/同ねずみ目ねずみ科全種(ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミを除く)
鳥獣保護法施行規則第13条
法第十三条第一項の規定により環境大臣又は都道府県知事の許可を要しない捕獲等又は採取等は、農業又は林業の事業活動に伴いやむを得ずする捕獲等又は採取等とする。
要するに、農林業事業の妨げとなるようなもぐらとねずみは、いちいちお上の許可を得ずとも駆除してよろしい、ということですね。なお、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミは「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣」として鳥獣保護法の適用除外となっています(鳥獣保護法施行規則第78条)。
さて。「狩猟でのとらばさみの使用は禁止です」と環境省のパンフレットには書かれています。ところが、ホームセンターなどに行ってみればわかりますが、とらばさみは「堂々と売られて」います。ネット通販でも購入できます。なんでこんなおかしなことになっているのか?
鳥獣保護法の範囲内でとらばさみの使用が許されうるのは、さるねこ父が条文を読み込んだり、環境省や都道府県の野生動物・狩猟関係のホームページ情報を読む限りでは、「許可捕獲」(鳥獣保護法第9条)の規定に基づいて環境省・都道府県が許可を出した場合のみです(もしかすると間違ってるかもしれないので、その時は後日訂正します)。それ以外であれば、鳥獣保護法第84条の違反で6月以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。「許可捕獲」の場合は環境省もしくは都道府県から許可証が出ますから、ホームセンターではそれを確認して売るのが筋というものです。
が、おかしなことに、そうした猟具販売時の確認義務はありませんし、許可を得ていない者に販売した場合の罰則規定もありません(このあたり、未成年への酒やたばこの販売者が罰せられるのとはえらい違いになります)。なので、ホームセンターへのとらばさみ販売自粛は、あくまで「お願い」というかたちにならざるを得ないのが現状です。
[参考となるページ]
- 動物を無差別殺傷する危険なわな トラバサミを見つけたら!すぐにできること|地球生物会議ALIVE
- 4月16日より とらばさみの使用ができなくなりました|とらやまの森(対馬野生生物保護センター)
- トラバサミの使用は違法です|京都市動物園野生鳥獣救護センターブログ
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