「ねこ困り」さん

先週の日曜日にさかのぼります。長崎県地域猫活動連絡協議会の方に、ねこのことで相談事のメールが入りました。「ねこが増えて困っている、近所の一部の方からはクレームもいただいていて、どうにかしたいけれども、どこからどう手をつけたらよいのかわからないので相談に乗ってほしい」ということで、ねこ会議(1号)さんきくいちさんと一緒に現地を訪れました。

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港に繋留されている漁船の向こうにはお墓の団地。ながさきらしい風景のひとつかもしれません。

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まず出くわしたのは、キジとブチ。

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薄いグレーキジ……かな。緑色のきれいな眼をしています。

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ちょっと目やにが多いですが、チャシロくん。そしてその向こうのすだれのうえにわらわらと……

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わらわらと、ねこ溜まりが。

眼病と皮膚病が多くのねこたちに見られて、ちょっとかわいそうな感じではあります。ウィルス性の鼻気管炎も何匹か。あまり状態はよろしくないですが、このねこたちは、餌やりさんが好きで集めたわけではありません。

もともとこの地域は、漁村ということもあって、船の鼠害を防いだりする目的でよくねこを飼っています。ねこたちは、人間が捕った魚のおこぼれをもらってまずまずの生活をしていました。もちろん不妊化なんて考えなどはあるはずもなく、子ねこが生まれてしまって飼えない場合は、目が開かないうちに海に流されていました。「目が開いていなければ、魂が入っていないから」という、そういう理由です。もっとも近い動物病院までは、山を越えて5km向こう。以前レポートした池島ほどではありませんが、病気にかかったねこをすぐに病院に連れていくとか、そういった考えはまだまだ浸透していない地域のひとつです。別にここが特殊なわけではなく、日本中どこにでもありえる状景です。

問題は、「目が開いてしまった子ねこ」です。魂が入ってしまったから、おいそれと殺すわけにはいかない。だけれども、自分のところでは飼えない……と、思い当たるのが「あそこの○○工場のところには、いつもたくさんねこがいて、工場の職員さんがよく餌をやっているのを見かける」という事実。「よし、あそこの近くに置いてくれば、飢えて死ぬことはないだろう」と、夜陰に乗じてねこを捨てに来る人がいる。ここのねこが全部で19匹にまで増えてしまったのは、そういう理由です。捨てる現場を直接押さえたことは一度もないけれど、夜、暗くなったあと、ふと茂みを見ると、新しいねこが1匹、2匹と増えている。どう考えても、誰かはわからないけれども、「捨てに来られている」ことは間違いない、と相談者の方は話していました。

そして、そうやって増えたことがまた目印となって、どんどんねこは捨てられていく。港周辺の散歩コースにもなっていて、「ねこが多い」と苦情を言っていくひともいる。ねこが嫌いなわけでは全然ないけれども、際限なく置いていかれるねこたちの面倒をこれ以上見るのは苦しい。どうしたらいいでしょうか、ということなのです。

「飼えないからって、捨てないで。」キャンペーンでパトロールを行なった唐八景公園も、おそらく「捨てられたねこが目印となって、さらにどんどん捨てられた」ケースです。そして今回のこの相談者さんの問題は、自分たちの職場の目の前でそれが起こっている、という点です。「ねこは好きだけれど、でも好きだからこそ、この状況には困っている」という「ねこ困り」さん。ねこの多いながさきだからこそ、特にそういった「ねこ困りさん」は、たくさんいることが推測されます。

 

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ねこ会議(1号)さんにすりすり

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相談者さんに2匹で甘える。抱っこしてもらおうと、自分から飛び乗ります。

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すりすりしすぎて、パレットから落っこちそうになる

 

19匹まで増えると、個人レベルでの不妊化は難しくなります。けれども、そう言っていると、捨てられるほかに、自家繁殖でもどんどん増えます。そうやってこの春生まれてしまった子ねこもいます。

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おとなしく抱っこされたわけではなく……

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いーやーやーめーてー!

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こちらはシロクロちゃん。

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ふさふさ白ねこの母ねこと、おどおどグレーキジちゃん。右のチャシロは、別のお母さんが産んだようですが見離されてしまい、この白ねこかあさんが面倒を見ています。残念ながら右目はウィルス性の風邪にやられてもうありません。あんまりかわいそうなので写真はやめておきます。

 

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この白ねこのオスは、少し離れたところがなわばりで、内外飼いのようです。もちろん未去勢。だから、ねこはどんどん増えます。この現場でも、港の周りに住んでいるお宅でも、どこでも。


地区における内外飼いねこ&外ねこ(ノラねこ)の一斉TNRや、地区住民の方々・漁協などを巻き込んだ「地域ねこ」化、各種の助成金の獲得、「捨てないで」というアピールと、現在いるねこたちの里親探し。そうした複数の手段を組み合わせながらでないと、しわ寄せはこの相談者さんに集まってしまい、にっちもさっちもいかなくなります。

飼い主さんが、個々の飼いねこを責任を持って不妊化してくれるだけで、状況は一変するはずです。不妊化は、2万円前後しますから、「高い」ということで放置されるケースはあまりに多い。そこを放棄して、今回の相談者さんのような善意の保護者に甘えるのは、社会的・道義的には許されることではないはず──ですが、なかなかその意識は浸透しない。

「ねこ困り」さんは、ながさき町ねこクラブのまちねこさんの造語です。「困っているひと」に対しては、ながさきのひとたちは比較的手をさしのべる傾向が強いように思います(たとえば東京に比べて)。「餌やりさん」はしばしば、「あのひとは、好きでねこを集めているんだろう?」と(無責任にも)思われています。実際、本当に好きで集める人、どこにでも出かけていって餌をばらまくようなちょっと困った「餌撒きさん」もいますが、「決して嫌いではないけれど、本当に困っているひと」というケースも多々あります。「困っているひとを、どうやったら助けられるだろうか? どんな協力ができるだろうか?」──そういう視点から、ながさきのねこの問題を考えてみたいとさるねこ父は思います。そしてその最初の手がかりとなるのはおそらく「困っている問題を、周りのひとに話して、地域の問題としてシェアすること」ではないかなと思います。分け合えば荷物は軽くなる。知恵を寄せ集めることもできる。「話せばわかってくれる(ひともいる)」のは、たぶんながさきのいいところ。そう考えながら、いろいろと策を練っているところです。

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